『アーカーシャのうた』〜鯨井巖「一学徒兵の北部沖縄戦回想録」〜@神楽坂セッションハウス
心待ちにしてきた鯨井謙太郒さんの公演。
ご自身のお祖父様の学徒出陣の回想録というプライベートな題材を踊られること、ユニットの相方でもある定方まことさんの語り、野口泉さんのオイリュトミー、妹さんの三線、Noema Noesisの合唱と、どれも見逃せない要素ではあったのですが、とにかく凄かった。深かった。
「観る」というよりも、「立ち会う、居合わせる」ような体験でした。
当時の情景と人物を行き来しながら粛々と語られる回想録。それだけで映像が浮かぶところに、鯨井さんの身体を通して体現され、追体験される記憶。その身体、動き、息遣い、空間。
時折、定方さんの語りに鯨井さんの声が重なると言葉が突き刺さる。
オイリュトミストが言葉を踊るということの威力は、これまでも知る機会があったけれど、今日のそれは鯨井さんの身体感覚をそのまま受け取っているように思えて、息苦しくなるほどだった。
合唱は美しくて優しくて、目の前の空間の痛みを宿しているようでも、記憶の痛みを癒しているようでもあり、モノクロームに光が挿すような気がした。楚々とした三線の音色との重なりも印象的だったし、野口さんの佇まいも全てを包み込むようで何と言うか存在感がとても深かった。
戦時の回想という重いテーマを美しい要素で織り上げた中に淡々と哀しみがあり、託された希望も存在していたと思う。
無いものを満たすためではなくて、在るものと在るものの間(あいだ)に確かに存在する間(ま)というのものを強く感じた場でもありました。